口頭指示の理解が難しいのは、自分の頭の使い方をよく分かっていないからかもしれません。
人間誰でも、頭にスッと入ってきやすい情報、入ってきづらい情報があると思います。
なぜなら、人それぞれ、情報の捉え方や記憶できる量が違っているから(脳の特性)です。
自分に合った情報の捉え方、自分ができる記憶量を知らないと、情報が入ってきづらく、また、情報をとどめておくことができずに、口頭指示理解の難しさや抜け漏れにつながってしまいます。
この記事では、情報の捉え方から考える、口頭指示を理解するための方法について紹介しています。
口頭指示の理解が難しい理由
口頭指示の理解が難しい理由のひとつとして、情報処理の仕方と、記憶力について取り上げていきます。
処理の仕方と口頭指示の受け方が合っていない
同じ情報に全く一緒のタイミングで触れたとしても、その情報をどのように頭の中にインプットして処理し、理解していくのか、その過程は人それぞれ違います。
自分の情報の捉え方に合わせた指示の受け方をしないと、情報がスッと入ってこなくて、指示理解が難しくなってしまいます。
ここでは、代表的な4つの情報処理・認知の仕方をご紹介します。
同時処理
全体をとらえることが得意な処理の仕方です。たとえば、こんな傾向があります。
- 結論から知りたがる
- 要約して話す
- 地図を俯瞰で読むことができる
- 目的が分かると動きやすい
- 順序だてて考えることは苦手
私が出会ったことのあるTHE同時処理の人は、まさに鳥の目で道を捉えていて、一度行ったことのある場所は二度と地図を見なくてもたどりつける能力を持っていました。
口頭指示を出されたときに、目的や全体像がつかめないと何の話かいまいち分からない…となるのも、同時処理の人の傾向として考えられます。
継次処理
順番にとらえることが得意な処理の仕方です。継次処理の人の傾向としては、次のことが挙げられます。
- ひとずつ処理していくことが得意
- 順番に知りたがる
- 順序だてて話したい
- 道は「右折して左折して…」とひとつひとつ覚えていく
- まず何をすれば良いかが分かると動きやすい
私自身はTHE継次処理タイプの人間なのですが、タスク管理が人よりも得意という長所があります。
これは、ひとつずつ片付けていくため抜け漏れが生じづらいためだと分析できます。
口頭指示を出されたときは、やることがたくさんあって優先順位がついていないと混乱することが多いです。
聴覚優位
聴覚情報の方が理解しやすいことを、聴覚優位と呼んでいます。
聴覚優位の人の特徴としてこのようなことが挙げられます。
- 文章を読むとき頭の中で声が再生される
- 誤字脱字が少ない
- 何か単語を言われたらその言葉のまま頭の中で再生される
- 声に出すと知識を覚えやすい
ちなみに、私は聴覚優位を自覚しています。読書が趣味なのですが、本を読んでいるときは常に頭の中で声が再生されています。
実は、今これを書いているときも、「いまこれをかいてるときも」という声が鳴っています。
聴覚優位の人は、口頭指示を受けるとき、言葉がすべて入ってきて余計な情報まで捉えてしまっているかもしれません。結果、何の話が良く分からなくなっていまいち理解できない…となりそうです。
視覚優位って?
視覚情報の方が理解しやすいことは、視覚優位といいます。
視覚優位の人の傾向はこんな感じ。
- 文章は、まず画像として頭に入ってくる
- 似た文字を読み間違えがち
- 何か単語を言われたら写真やイラストが頭に思い浮かぶ
- 言葉を覚えるときに形で覚えている
- 色やイラストなど視覚的な情報があると覚えやすい
視覚優位の人と一緒に働いていた時は、物の配置替えや、同僚の見た目の変化にすぐに気が付いてくれることが多くありました。
普段から画像として頭の中にインプットしているから、その画像が変わると気づきやすいんだな~と思います。
視覚優位の人は、口頭指示など、言葉だけの説明だと頭にスッと入ってきづらくて理解が難しくなる可能性があります。
処理のタイプを知るには?
自分がどの処理タイプに当てはまるかを知るには、振り返りが大切です。
「間違えた」「分からない」「忘れた」「うまく伝わらなかった」といった状況で、自分の理解の仕方や話し方を振り返ってみましょう。
「あ、自分順番に話してるわ」「あの人は結論から言わないから分かりにくかったんだな」「文字を読むとき頭の中で音が再されているな」などの傾向が見えてくるようになります。
「順番に話してるってことは、継次処理なのかな?」「文字を読むとき頭の中で再生されているってことは、聴覚優位なのかな?」と、自分の処理のタイプがだんだんと分かってきますよ。
ちなみに、人と話すときは継次、伝えるときは同時、など、場合によって違うことも全然あります。
記憶の一時置き場が小さい
人それぞれ記憶できる量は違います。同じ口頭指示を受けたとしても、それを覚えていられる人、抜け落ちてしまう人はいますよね。
脳の中の一時的な記憶の置き場をワーキングメモリーと言います。
このワーキングメモリーには人それぞれ容量があって、大きければそれだけ記憶をとどめて置けるし、小さければ新しい情報が入るごとに古い記憶が抜け落ちていってしまいます。
ワーキングメモリーが小さい人にありがちなことを次に挙げてみますね。
- 自席に戻ってメモを書くまでの間に「何言われたんだっけ?」と忘れてしまう
- マニュアルを見ながらファイリングする→「あれ、なんだっけ?」と何度もマニュアルに戻らないと作業が進まない
自分の記憶の一時置き場がどれくらいの大きさなのかを知らないと、容量を超えた情報の口頭指示をメモなしで受けてしまうかもしれません。
置き場の容量はもうまんぱんなので、当然抜け漏れが生じてしまいます。
じゃあどうすればいいのか?
ここからは、処理の仕方・記憶量の違いに応じた口頭指示を理解する方法を共有していきます。
口頭指示を理解する方法
口頭指示を理解するためには、自分の情報認知・処理の仕方や記憶を保管できる量に応じた対策を取る必要があります。
処理の仕方別、口頭指示の受け方
同時処理の人向け
同時処理の人のキーワードは、まとめるです。
同時処理の人は、全体像が見えない状態で指示を受けることにストレスを感じる可能性が高いです。
そのため、まず全体像を把握するために、目的の確認を必ず行いましょう。
そして、「つまりどういうことなの?」と自分に質問。もし自分で考えて分からなければ、指示者に確認しておくと良いですね。
継次処理の人向け
継次処理タイプの人のキーワードは、ひとつずつです。
継次処理タイプの人は、順序や、まず手を付けるべきことが分からないと混乱してしまう可能性が高いです。
そのため、指示を受けるときは箇条書きでメモをとり、順序が分かるようにしておきましょう。
また、「まずやらないといけないことは?」と自分に聞いて、最初に手を付けることを明確にするのもオススメです。こちらも、自分で判断が難しければ指示者へ確認しましょう。
聴覚優位の人向け
聴覚優位の人は、言葉で理解することが大切です。
メモをとるときは文章でまとめるのが聴覚優位の人には分かりやすいと思います。
ただ、言葉がダイレクトに頭に入ってくるため、余計な言葉も入ってきやすいかもしれません。
そんなときには、5W1Hでメモを取れるフォーマットを用意しておいて、それ以外の情報は端っこにメモ書きする、と決めておくと情報の整理がしやすくなりますよ。
視覚優位の人向け
視覚優位の人は、イラストや色などの視覚的な情報を使うと、理解がしやすくなります。
写真や画像が載ったマニュアルがあればそれを見せてもらったり、手順は実際にやっているところを見学させてもらったりできると、一番情報が入りやすいと思います。
難しければ、メモをとるときにイラストや色を使ってまとめる方法がオススメです。
メモをとるときは時間が限られているので、シールを使ったり、図形を使うルールを決めたりしておくと時短に分かりやすいメモを取ることができますよ。
ワーキングメモリーが小さい人向け口頭指示の受け方
ワーキングメモリーが小さい人は、自分の頭以外に記憶の保管場所を作ること、復唱することが大切です。
メモは必須です。スマホメモやボイスレコーダーを使えれば一番安心ですが、使えない職場もありますよね。そうなると、やっぱり紙のメモを取る必要があります。
いつ指示が飛んできてもいいように、常に机の上に開いた状態のメモとペンを置いておきましょう。また、小さなメモとペンは常に携帯して、なんでもメモに取るようにするのがオススメです。
そして、認識した内容に漏れがないか、復唱して確認しましょう。復唱の時間を取ってもらえないようであれば、文章にまとめてチャットやメールで送ったりするのもアリですね。
自分がどのタイプか分からない人へ
最後に、自分がどのタイプの頭の使い方をしているか分からない人に向けて、どんな人でも使える口頭指示理解をスムーズにする方法をご紹介します。
- メモは必ず取る(自席に用意、持ち歩きようにも用意、いつでも書ける位置に置く)
- メモの取り方を工夫する(箇条書き、イラスト付き)、自席に戻ったらまとめる
- 指示は必ず復唱、文章で送って確認する(文章だと相手の負担も少ない)
- 初めての作業は途中確認をする(間違っていても取り返しをがつくように)
まとめ
以上、口頭指示の理解が難しい理由や対処法についてご紹介してきました。
口頭指示の理解が難しいのは、処理の仕方や記憶力に合わせた対処法が打てていないからかもしれません。
自己理解を深めて、メモの取り方・指示の受け方を工夫していきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました!